mellowbrain’s blog

カウンセリングに通っています。ここには頭の中の整理を落としています。

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

音楽はもちろんのこと、文字でさえ音を想起させる。しかし絵画だけは、完全な静寂を守ることができた。のちになって治英の夭折を考えると、彼がその短い人生のあいだに、何か時間を占領し、時間を埋めるような性質を持った芸術を、生への脅かしと感じたことは理会できる。彼にとっては時間が生であって、絵画はその短い生をつかのまでも停止させ、延長させるよすがとなった。一方どんな短い音楽でも、それは時間を蝕み、生を陶酔によって短くし、常よりも早く終わらせてしまうように思われた。治英はたしかに陶酔をさけていた。

こうして喋ってる私もいつか確実に死ぬ。否応なく死ねる。