お姉ちゃんのこと

夢に人数制限なんてないけど、一つの舞台には役割と人数制限がある。
設けられた座が一つなら、それを手にするのは一人。それが自分じゃなかったら、選ばれなかった事実を受け止めるしかない。それまでにどんな努力があろうと、それは仕方がないことだ。
だから当然妬む人が出てくる。
選ばれた人は、選ばれなかった人の気持ちも分かってる。
それでも舞台に上がらなきゃいけない。
自分の努力と進歩を世間に認められることはそういうことだ。
お姉ちゃんはそういう世界でそんな複雑なことを繰り返して来た。
そういうことが、彼女を強くしてきたんだと思う。



音楽に携わる勉強をしているお姉ちゃんは最近、ある役割に選ばれた。
あたしがその知らせを聞いたのは実家にいるときで、皆で電話して騒いで喜んだのだけど、なんだかどんどん大きくなっていっちゃうんだなーと、何となく感じたりもしていた。その気持ちは、彼女が東京の高校に行くため一人で上京した時からずっと感じている気持ちだった。あたし達のお姉ちゃんはあたし達小さな家族の中でだけ太陽であってほしいと思っていた。
小さい頃から、姉妹で比較されることが多かった。明朗で、決して美人なタイプではないのにすごく愛嬌と人望がある人だった。お姉ちゃんはずっとあたしの心の中で光っていた。良い意味でシスコンというより、どちらかと言うと負のコンプレックスだった。一緒に住んでいる時もいない時も、いつも母や父や家族や親戚中の注意を受けて、期待されている彼女が羨ましかった。だから、彼女が帰省するとあたしは嬉しい半面いつも機嫌が悪かった。大好きなのに腹を立てていた。だから尚更、好きをどうしたらいいか分からなくて、苛立ちは飲み込んでいくしかなかった。

あたしが大学で上京して、お姉ちゃんと一緒に暮らし始めてから一年。一緒に暮らすのは6年ぶりのことだ。彼女は努力家だし、極端なこともあるけれど面白い人だ。あたし自身が一つの大きな目標にに向かって生きている人間じゃないからこんな風に思うのかもしれないけれど、一生付き合う物事とその目標を小さい時から決めていて、そのためにずっと努力し続けられるということ自体、変わってると思う。そして今の所努力が確かに進歩に繋がっているということも含めて、多分ものすごい奇人なんじゃないかと思う。ほんとにあたしと血が繋がってるのか疑いたくなるくらい。

3週間ぶりに東京に戻った時、久しぶりにたくさんのことを話した。ご飯を食べながら話してくれた選ばれた役割の話は、実家で家族たちが喜んだ温度とは違うものだった。関係している人はものすごく喜んで励ましてくれたけど、一番内輪の人達は明らかに不自然なほど誰も触れてこなかったこと。無視に近かったこと。その人たちの思ってることが伝わってきて、同じ部屋にいるのが辛かったこと。
努力している人の世界はそういう世界なんだ。
あたしが彼女を羨んでる場合じゃないと思った。
家族はいつも味方だから。
外で傷付いて帰ってきてもまた復活できるように、彼女の安心要素の一つでいられるように。
それはあたしが何をするかではなくて、何の因果か同じ家族に生まれたあたしが勝手に消えないことだ。
勝つとか負けるとかじゃない。
あたしは彼女の妹に生まれた。それだけのことだ。