キスで作ったネックレス―ウィーツィ・バット ブックス (創元推理文庫)

キスで作ったネックレス―ウィーツィ・バット ブックス (創元推理文庫)

(ウィーツィは)白いハンドバッグに、ピンクの小さなハローキティの財布、黒の大きなサングラス・ケース、歯ブラシ、歯磨き粉、デンタルフロス、制汗剤、ジャスミン×クチナシの香水、チューブ入りのピンクの口紅、ハート型のパウダー・コンパクト、トラベル用の日焼け止め数本、保湿剤、ヘアジェル、シェービングクリーム、剃刀、くし、携帯電話を入れた。唇にピンクのリップグロスを塗り、それもハンドバッグに放り込む。そして、新聞紙で顔を覆ったまま眠っているマックスを見にいった。

ウィーツィは妖精みたい。いつもポップでキラキラ。
マイ・シークレット・エージェント・ラヴァー・マン。
二度目の表記のとき、「理想どおりの最愛の人」にルビ打ちでマイ・シークレット・エージェント・ラヴァー・マンと入れるあたりが金原瑞人氏だと思う。
フランチェスカ・リア・ブロック和訳版の醍醐味はカタカナの多さ、とそれによるカラフルな印象、ファンタジックな人物。
訳者はブロックの、重いことも軽い印象に記そうとする意図をよくわかっていて、だからこそ故意にカタカナ過多の文体にしているんだろう。


911の悲劇から抜け出すことが出来ないマックス。「九月が二年続いた」
マックスのやったこと、それは自分の悲しみ―世界に渦巻く底なしの悲しみ―だけでなく、ウィーツィの悲しみまで受けとめようとすること。
それが良いことなのか悪いことなのかわたしにはわからない。
だって世界中のあらゆる悲しみを自分が背負えば、悲しみで前も見れないところにいる人が少しでも安らかになれるんだとしたら、そうなればいいのに、と思うことはいくらだってある。
ここで今を生きている人を失わないように、かげがえのないものはこれ以上失わないように。
失ったときに後悔しないようになんて、口先だけの綺麗ごとだから、後悔しないことなんてあるわけないんだから。
とにかく目の前のことをしっかり見なくてはいけないんだ。