碇シンジ演奏会

起きて着替えてお味噌汁を啜っていると母が「あんた真っ黒いメイクしないでそのままできな!」
でも知り合いの先生も来るし迷う。今日は弟の演奏会。




チケット持ってホールに入ると、ステージでフリフリのドレスを着たちっちゃい女の子がピアノ椅子に座っていて、フリフリの白いソックスに包まれた足をプラプラさせながらメヌエットを弾いていた。
丁寧にお辞儀をして、ドレスの背中に付いているたまご色のリボンを揺らしてそでに捌けていく。あたしもあんなだったのかな。おかっぱの頃やおさげの頃。ミッキーのバイエル。ピアノに触ればくまやうさぎが現れて森の中に連れて行ってくれる。音取りは苦手、調音と暗譜は得意。百年眠る姫を見ているつむぎ歌。魔女。ジプシーの踊り。砂漠のばら。

四年生くらいの女の子がビバルディのバイリンコンツェルトを弾いた。
苦悩からの出口を探しているような、美しい旋律。目の奥が張り詰める。
たとえいつか弾かなくなったとしても、あなたの手はこんなに素晴らしい曲を弾いていたんだよ。
それを知って生きていける。尊いことだ。泣きそうになる。




ステージに出てきた弟はシンジくんみたいでした。服装がね。あとチェロだからね。
きっと会場に来てる人たちは演奏がどうとかの前にあの夏服の制服姿+チェロ+物憂げな表情(緊張してるだけ)見て
「(いやぁ……思春期やわぁ……!思春期の葛藤と自己実現見てまうわぁ……!)」
という点に萌えてんやろとか思った。そういう自分が少し萌えていたことには触れない。身内に萌えるとこまで落ちぶれたとは言わせねえw

そしておもむろに弾き出したのが「無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュード」ってお前は碇シンジ狙いか!(と言いたくなったのはあのホールで恐らく一割はいた。
なぜ控えめに一割なのかと言うと来ていた年齢層がシニアかベビーブーム世代か幼稚園のママ世代かキッズだけだったからです。歯がゆい……)
そしてそれをホール最後列中央で手を目の前で組みながら聴いているうちの父はさしずめ碇ゲンドウか!あんたら直線状に並んでるぞ!父「あいつ……フフフ」ってゲンドウか!
ならば碇ユイはどこだ!碇ユイは後ろの通路でそわそわしていたかと思えばいつの間にかゲンドウの肩に手を置いて温かい目で聴いている!
てことはゲンドウの横に座ってるあたしは赤木リツコか!そしてその更に横の祖母はまさか赤木ナオコか!

なんて考えて悶々。
静寂のホールでソロというのはいいね。
でも音聴いてめっちゃ緊張してんだなぁ、と思った。
昨日はC線ガスガスいわせてたくせに。
バッハなんだからそんな爆発させちゃいけないんだそうです。
終わってから緊張してた?って言ったら
「やー弾き始めてから弓張り忘れてたことに気が付いてさーパニったー!弓しなっしな!」
だって。あほー!