mellowbrain’s blog

カウンセリングに通っています。ここには頭の中の整理を落としています。

どくしょはじんせいのかてである

終末のフール

終末のフール

Today is the first day of the rest of your life.
今日という日は残された日々の最初の一日。
             ──by.Charles Dederich.

という言葉が頭に綴ってある。
何の知識もなくただ読み出したら、恐ろしい設定であることに気付いた。
「あと8年後、地球に隕石が落ちてきて人類は絶滅する」という発表が出される。発表があってから、隕石落下から身を守れるシェルターが存在し、それには選抜された人のみが入れるという噂や、オセアニアの一部なら被害から生き残れるというデマが流れて、多くの家庭が移動を始めて世間が混乱に陥る。学校は封鎖され、食糧の奪い合いが起き、混乱から殺し合いが始まる。治安悪化を食い止めるために、警察は武力を行使する。このまま生きていくことに耐え切れなくなった人々は隕石によって死ぬ前に、と次々と自殺、一家心中を図る。
そんな時代を5年間経たところから、話が始まる。5年の間に荒れるところまで荒れたのか、足掻いたって無駄だから今は毎日を大事に生きるべきだと悟ったのか、ここのところ世間は妙な穏やかさを見せている。残された時間はあと3年。
こんな風に書くとすさまじいSF小説っぽいけど、実際はもっとゆったりまったりな雰囲気で書かれている。同じ設定の中で章ごとに主人公が違っていて、最初の章なんかは老夫婦が主人公なので、ほんとにまったり。隕石の設定なんかはあくまで登場人物の気持ちを揺らすための設定の一部であって、メインに表されているのは主人公がどんな風に自分の生活を眺めて、これから3年の命のために何を選ぶか。SFのための面倒臭い状況説明文もなくすんなり読める。
そして、章ごとの主人公同士がちょっとずつ絡んでいて、あっちこっちでその後談みたいなのも入っていて、すごくたのしい!これやりそうでやらないんだよね。みんなもっとやればいいのに。もう伊坂さんすきだー!

黒い家

黒い家

青の炎を思い出して、あたしは緻密な犯行とその心理が読みたかったんです。
でも間違っていたよ。だって知らなかったの。貴志さんがホラー作家だということを!
夜の10時頃に読み出して、最初の章でうすうす気付き始めたものの、もう怖いとこ読んじゃったからなんとかその真相を知るまでは怖くて寝れないので、ガタガタしながら4時くらいまでぶっ通しで読むはめになりました。
ホラー好きのみーに「黒い家ホラーだったお!?」と話したら「タイトルで気付けー!」と言われた。いやこれ、
黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

こっちの表紙だったらさすがに気付いたよ、これはマズイって!なんか吊ってるって!

「午前零時」というテーマで、13人の作家が短編を書いたアンソロジー。収録は、

「ハンター」            鈴木光司
「冷たい手」            坂東真砂子
「夜、飛ぶもの」          朱川湊人
「卒業」              恩田陸
「分相応」             貫井徳郎 
「ゼロ」              高野和明
「死神に名を贈られる午前零時」   岩井志麻子
「箱の部屋」            近藤史恵
「午前零時のサラ」         馳星周
「悪魔の背中」           浅暮三文
「1、2、3、悠久!」        桜庭一樹
「ラッキーストリング」       仁木英之
「真夜中の一秒後」        石田衣良

作家さんを見ると分かるけれどホラーやミステリー系。
ぶわーっと読むと、世にも奇妙な物語を見てるような気分になった。
特に恩田さんの「卒業」は、この人のおいしいところだけをこの数ページに詰め込んでいて、ものすごい臨場感、戦慄。一体今日は何の日なんですか、この女の子たちが卒業できるっていってるのはどんな恐ろしい学校なんですか…。しかも全貌が分からないままぷつんと終ってしまっているのが逆にテンションMAX!のまま余韻に浸れる。すごいよーおもしろいよー!
それから馳星周さんの「午前零時のサラ」を読んで、小説に動物を出すとどうしたって涙をさそうなあと改めて思った。

大きな熊が来る前に、おやすみ。

大きな熊が来る前に、おやすみ。

中編が3作。この人の恋愛小説はただの恋愛小説じゃない。過去がある限り、逃れられない縛りが生まれて、愛情を素直に受け入れられなくなる。同属嫌悪と、同属に惹かれることは同じことで、そこに未来がないと分かっていても、気付いたら後戻りできなくなる。ナラタージュの葉山くんを思い出した。島本さんは一人称のうまい人だと思う。最近佐藤友哉さんと結婚したんですね。