はかないものが好きな理由

はかない、せつないものが好きだ。
きっとそれは、今の一瞬にしか起きない、見えないものの、その一瞬の事象を感じたくて、
ずっとはとどまらないものを美しいと感じるからだ、と思っていた。
でも、それだけじゃないことに気が付いた。


はかない、と感じるとき、愛しいと綺麗の間に、ちょっとの痛みを感じる。
胸を爪で引っ掻かれるようなその痛みは、罪悪感や喪失感と少し似ている。
それはとても懐かしい感覚だ。
昔にこういう気持ちをたくさん感じていたのに、なんですぐ忘れるんだろう、と思う。


小さいとき、一番綺麗だと思ったものは、いつも自分のものにならなかった。
側の誰かが持っていった。
欲しいと言う前にもう誰かのものになっていた。
友達や、母、父、
拗ねたりむづがったりを何十回と繰り返すうちに、
何してもそれらは自分のものにならないことを学んだ。
そういうときは泣き寝入りする術を知った。
そのうち欲しいと言うのをやめた。
時々、何かの理由で欲しいものがあたしのものになることがあった。
貰えば貰ったで、心なし不安だった。
あたしがもらうはずじゃない、と思った。
すぐに取られちゃうんだろう、と思っていた。
取られるという不安を胸に抱いて、
慣れない喜びに怯えながら、
手にしたものを守ろうとした。
嬉しいことが恐かった。
不安なままでいるのがいやで、心の反対側でこんなことなら早く奪われてほしいと思っていた。
楽になりたかった。
自然と、周りの誰かがそれを奪ってくれるのを待った。
だけど、奪われたらやっぱり寂しかった。
自分で奪わせたのに、自業自得だと思った。
一番綺麗なものや、一番好きになったものを、
自分のものにするのは苦手になった。
そういうことをして大きくなった。
5才や6才の頃からの癖を、もうすぐ19になるあたしは未だに繰り返している。



何かを好きになると、
そういう懐かしい不安を思い出す。
絶対触れられないものだから、
綺麗なものや美しいものは、自分のものにしちゃいけない。
多分そういうものに会ったときに、はかない、せつないって感じているんだ、
と思った。