H ZETT M

泉昌之。(ヒイズミマサユ機/HZM/H是都M/H ZETT M)
H ZETT M名義の新作アルバムが出るらしい。
中学生の時に発症して高校時代の脳味噌の9割を占めていた椎名林檎女史崇拝期の頃に、同時進行でPE'Zファンでライブとか行っていた。
そしたら樋泉さんが東京事変第1期の鍵盤担当になったり楽曲提供したりそれが東京事変デビュー曲になったり林檎女史が彼テーマの曲書いたり、もうなんかそこ繋がっちゃうんですか!?殺す気!?キュン死にさせる気!?みたいな時期があって頭の中がてんやわんやだった。
その頃好きだった人がことごとく樋泉さん似だったんだけど、その人と大変上手くいかなくなって変な症状が出始めたのでH ZETT M名義で出したアルバムも何となく遠ざけてた。
しかしそろそろ触れるようになったっぽいので、新しいの聴く前に!と急に思い立ってゴッタニイレヴンのレビュー書いてみたいと思います。ていうかレビューじゃないねこれ。感想文か。



1.名前を書く
こういうので始めるところが彼なんだと思う。宣戦布告。起立奏法で鍵盤ぶっ叩きながら狂ったように跳びはねる彼が見える。しかしあのKORG5Xよく壊れないよな。

2.ピアノイズマイライフ
ピアノのハウツーを歌に乗せ指南。「これが大体基本なのでしっかり守るようにー」
後半のテーマで急に吹奏楽の課題曲みたいなのが出てくる。終始陽気。

3.田園
始まりから2曲続いてこれがくると待ってました感で滲みる。郷愁的感傷第1波。和音が清らかでタイトル通りの情景が浮かぶ。でもシャープの調合を多用してるせいか、完全な長調ではない。久石譲的世界観。トトロよりも千と千尋の神隠しに近い。夕焼けの雰囲気。
でも途中でキーボードが入る所は少し都市的になる。入ってる時間は短いけど動きは大きい。ピアノが情景だとしたらこのキーボードは主観。
キーボード消えた辺りから入るノイズが効果大。せせらぎみたいな音で上手く次に繋がる。

4.君と歩いてく
希望的感傷第2波。歌詞も流れも素直な印象が強い。
ロボットみたいなフレーズの繰り返しから徐々に予感を匂わせてメロに入って、そこで初めて人間的な和音が出て来て、それが卑怯なほど涙を誘う。そして「立たせるんだ」で予想を裏切られて、泣いてちゃだめだと立ち直される。
間奏のカモメみたいな音でPE'Zの「かもめが翔んだ日」をどうしても思い出して感慨に耽る。全体的に前向きです。

5.バカンス
現実に帰ってくる。
曲に接点は全くないながら個人的に思い出すことがあって、以下の歌詞が

で羽がDA伸びてYAソレをMmmたたむ
(バカンス/H ZETT M)

俺はうすく目を開けて 閉じて そして また開く!!
(OMOIDE IN MY HEAD/NUMBER GIRL)

文脈的に解釈は全く違うんだけど、単に言葉だけ比べたら似てておもろい。
樋泉語「やんす」はこの曲で登場。

6.腹ヘリ犬〜即興ロンド
このCDの最高峰(だと思う)!感傷第3波。犬目線!歌詞見なかったら最初ほんとにドイツ語みたいで、訳が分かったら猛烈な愉快が襲ってくる。でもメロにしろ歌詞にしろ刹那で刹那でどうしようもなくて、一回聴くと戻れなくなる。中毒化必至でした。「僕は犬以下の犬」とか「まだまともじゃないよ」とか「別段何も欲さぬフリで舌出す誠意とは」とか、どっから思い付くんですか。本業は作曲演奏なのに!
私はPE'Zの楽曲でも「アンダルシア」のリピート数が異常だったりして、こういう旋律の展開がどうしようもなくむずがゆい。狂乱して昇ってったまま帰ってこない感じが好き。逝って逝って!

7.サンデー
テンションぶっちぎりで誰が聴いても楽しくなれる。
フレーズがPE'Zのつくしんぼ収録曲と酷似しててやっぱ春疾風とか作った人だ!って思う。でも冒頭の下世話な雰囲気とか、初めて聴くと受け付けないのかもしれない。よくああいう雰囲気にしたがるけど。
因みに「よろしくございます」は一時期マイブームだった。お馴染みの宇宙語は今日も健在。

8.呪文
メロが4分音符でのべつくばなしに歌い出した後ろで、8分音符のグロッケンがキラキラしてる。全体の流れが、グロッケンの出て来る2つのパートの間にあるピアノとドラムのみのフレーズを聴かせるために作られている。と思う。

9.ベッドルームで跳びはねろ
希望的感傷第4波。このCDの中で1番、普通の日を普通に喜んでいる曲。終盤のドラソラドラソラの辺り、この人はこういうことをするから卑怯だ。なんて単純で雄弁な音階なんだ。これひとつで色んなことを語ってる。
そして驚くのは、こういう手の展開に多い「答えはきっとそこにある」的な曖昧な締め方じゃなく、このラストでははっきりと何なのか見えるもので示している。その答えの表現が、秀逸。そして示した途端に始まるエンドまでのピアノソロの上昇が歌詞通りの情景を見せていて、涙腺を直撃する。

10.あらよっと音頭
そして現実に戻してくれる。ズーンチッチズーンチ、ズーンチッチズーンチは意外にも癖があって耳に残る。軽妙でたのしい。

11.春疾風
ラストにやってくれました感傷第5波。清らかさの塊のような曲。原曲はPE'Zの「つくしんぼ」収録の「春疾風〜ハルハヤテ〜」。PE'Zバージョンがパンクに近い超速騒音なのに比べて、これはミドルテンポでピアノとストリングスで丁寧に叙景を表現している。何と言ってもテーマになっているピアノの両手ほぼ単音のフレーズにストリングスが低音から重なっていき、それぞれの対旋律を合わせてエンドに向かう所がひたすらに甘美。

  • 全体の流れ

タイトルに「ごった煮」ってあるものの、ちゃんと考えて曲順構成していると思う。
たとえば、3、4で泣かせたら5で我に返して、6で泣かせたら7で笑わせて、9で泣かせたらで10で現実に戻す、という風に必ず後始末を入れている。唯一それがないのは11だけで、きっとこれは余韻を味わう楽しみをひとつだけ残してくれたんだろう。粋な計らいだなあヒィちゃん!

樋泉さんの作品は世界がすごく二分されていて、その二つがこの最初の曲と最後の曲に現れてるんじゃないかと思う。皆さん今から私が泣かせて差し上げます的な物言いは毎回一切なしで、聴いてみる?くらいのスタンスでただ突っ立ってピアノに向かって、でも何が人の心を掴むか知っている。人が欲しがっているもので、それを自分が与えられるものだと知っている。だけどただ明け透けにそういう甘い所だけを差し出すんじゃなくて、それはもう地上の言語世界を何千キロも離れた所でだけ与えてくれる。だって彼の口から誰か人を諭すような言葉を聞いたことがない。この人は伝えようという意志があるのか?と疑いたくなるほど説明不十分で、いつも謎のベールを被って居たがって。だけど彼がちゃんと一人の人間で言いたいこと表現したいことに満ち溢れていることは、彼の作品を聴いてしまえば分かることなのだ。

ていうかCDになって聴いてるとなんかそんなもんかと思っちゃうけど、樋泉さん作って弾いて歌ってるからね。PE'Zだとここに飛ぶと踊る叫ぶと叩くがプラスされるからね。神の域ですよもう。

さて、ぐだぐだと偉そうに判ったようなことを書きましたが全ては単なる狂信リスナーの私感です。H是都M時代に、名前の命名について「深読みされたら面白いと思って」と言ってたくらいだからこのくらいの勝手な深読みは彼なら寧ろほくそ笑むんじゃないかと思う。うん。もしこれ読んだ樋泉昌之崇拝者の方いたら同じくほくそ笑むかせせら笑うかで勘弁してやってください。叩かれるとすぐ傷つきます。すいません。